※各賞コメントに関しては、沖縄NICE映画祭執行部において、作品のネタバレ等が起きない様に配慮し、編集を施しております。予めご了承ください。今後、作品の個別ページを制作していく予定ですので、随時お知らせ致します。
沖縄NICE映画祭2 グランプリ 「ミヌとりえ」 全辰隆(チョン ジュニン)監督
最終審査に残った作品はどれも見応えがあり、優劣つけ難く、審査員の評価も割れた。論議の中、グランプリを選ぶなら、「沖縄NICE映画祭」らしい作品を、と考え、山里さん、上杉さんにも最終的に同意いただいた。小さいながらも、もともとはアジアの独立国であった琉球は、その地理的な特性から大国間の諍いに巻き込まれ、数々の悲劇に見舞われた。最も悲惨な経験は、太平洋戦争時に、この島で三ヶ月もの間行われた激しい地上戦であった。実に県民の四人に一人が亡くなるという大惨事の痛みを、この島は今もまだ抱えたままである。朝鮮半島では、同時期に隣国日本による植民地化という大災難があった。国民は日本語教育が義務付けられ、一族の名前さえ日本風に変えられた。市民の多くが戦場に、また過酷な労働現場に連行され、命を落とした。映画「ミヌとりえ」では、今も続く当時の痛みを、被害者である韓国側の監督が撮った作品だ。登場人物はみなごく普通の韓国市民であり、他人を気遣う理性と優しさを持っている。映像は穏やかな冬の陽光にみちた韓国のノスタルジックな街並みを写し、美しい。そんな田舎町に、ひとりの日本人女性「りえ」が訪れ、過去の記憶を掘り起こす。その街に住む若い男性「ミヌ」は、「りえ」とともに過去を調べるうちに、当時の痛みを再発見する。その時、「ミヌ」は「りえ」にどういう態度をとったのか。結末は、ぜひ映画館で見て欲しい。私はこの映画を3回みて、3回目めに涙した。全辰隆監督の、決して声高ではない、しかし強い覚悟を確かに受け取ったからだ。
<講評 by 審査委員長 中川陽介>
とても静かで美しい映画。この作品は、日本からやってきた りえ と、韓国の青年 ミヌ が出会い惹かれ合っていく姿を通して、日本と韓国が抱える暗い過去を描いていくのですが、しかしそれは「拳を振り上げる」ようなものではなく、あくまで静かで美しい。沖縄と日本にも同じような過去があり、その深い溝はいまだに埋まらずにいると思います。頭ではわかっているが、出来そうで出来ない人間関係「お互いを認め合い許し合う」という理想の姿が、この映画には描かれていると感じました。静かだからこそ、それが強く伝わる作品でした。世界が戦争にまみれているこの時代に、沖縄の映画祭で「ミヌとりえ」がグランプリに輝いたというのは、とても素敵なことだと思います。
<講評 by 映画監督・テレビディレクター 山里 孫存>
※「ミヌとリエ」は、熊谷駅前短編映画祭2024(2/3~2/4)シネティアラ21でも上映されるそうです。ぜひ劇場でご覧ください!
沖縄NICE映画祭2 準グランプリ 「在りのままで進め」 松本動 監督
主人公の京華を女優、母親、妻と全てをうまく回すことがしづらい視点が良く描かれている。そして、同じ女優というポジションでも全く京華とタイプが違う天才肌のマコ、女優としての完璧さを求めるストイックな姿に行き詰まりを感じているように描かれている。そして、助監督の美奈は、尾道監督にあこがれるも、商業映画でのキャスティングに反発する。それぞれの女性が自分の信じる道を進むところがタイトルにつながっている。
そして、2回目は YouTube のメイキング映像や本作品前に作成した短編の紹介、クラウドファンディングのHP等を見てから、タイトルである「在りのままに進め」について深く考えながら視聴した。そうすると、実は作品中での尾道監督の受賞シーン、商業映画として興行成績を考えなければならない立場、自分が信じる作品クオリティ(女優のキャスティング)とクオリティを落としても観客動員ができる女優のキャスティングでの葛藤が、結構長い時間で描かれていて、自分が撮りたい映画がとれないつらさを吐露している事に気付く。「在りのままで進め」とは、尾道監督に対する商業映画と自主製作映画の狭間で悩むエールでもある様な、製作者(監督)からの隠しメッセージの様にも受け取れた。
そして、2回目は YouTube のメイキング映像や本作品前に作成した短編の紹介、クラウドファンディングのHP等を見てから、タイトルである「在りのままに進め」について深く考えながら視聴した。そうすると、実は作品中での尾道監督の受賞シーン、商業映画として興行成績を考えなければならない立場、自分が信じる作品クオリティ(女優のキャスティング)とクオリティを落としても観客動員ができる女優のキャスティングでの葛藤が、結構長い時間で描かれていて、自分が撮りたい映画がとれないつらさを吐露している事に気付く。「在りのままで進め」とは、尾道監督に対する商業映画と自主製作映画の狭間で悩むエールでもある様な、製作者(監督)からの隠しメッセージの様にも受け取れた。
<講評 by 株式会社エス・キュー・シー 倉田 克徳>
※「在りのままで咲け」と「在りのままで進め」は、1/27(土)~2/2(金)池袋シネマ・ロサで上映との事です。ぜひ劇場でご覧ください!
※この作品、主演の水村美咲さんは、前作「在りのままで咲け」においても俳優賞を受賞されていますが、実は前回も、様々な賞に対してノミネートされていました。ただ1回目の選考方針が、細かなノミネート状況を表に出さないって事でしたので、俳優賞だけかと制作関係の方々は思われたかも知れません。今回ノミネート情報を表に出して行くという方針です。選考委員の評価が高く、様々な賞の候補として事前にノミネート重要作として話題に上がっていた本作。今回は、上映セレクトに始まり、准グランプリ、俳優賞、音楽賞の4冠に輝いています!
この作品の制作に関わった皆様、そしてこの作品を沖縄に届けてくださった皆様に、イチ映画ファンとして感謝と御礼を申し上げます。
この作品の制作に関わった皆様、そしてこの作品を沖縄に届けてくださった皆様に、イチ映画ファンとして感謝と御礼を申し上げます。
(報告 by 実行委員 加納斉親)
沖縄NICE映画祭2 審査員賞(中川賞) 「FAAAWWW!!」 鬼木幸治 監督
「沖縄nice映画祭」は、自主映画のコンペティションである。応募作品の多くは、劇場での観客動員数、テレビ放映時の視聴率、スポンサーの意向などを意識せず、作り手の「こういう映画を観たいんだ!」という思いをストレートに込めた内容だ。今回は、タイムリープやパラレルワールドなどを扱ったSFものの応募が多かった。で、「FAAAWWWW!!!」である。内容を説明するのはヒジョーに困難だし、そもそも野暮なことなのだが、例えるなら星新一のショートショートか、「頭山」のような不条理落語を映像で見た、という感じ。SFなので、内容は奇妙奇天烈。映画冒頭で監督がついた嘘がどんどん膨らんで、「こりゃどうなっちまうのか?」という不安がどんどん膨らむも、最後にきちんと、(しかも素晴らしいリズムで)「オチ」をつけてくれ、「ちょー気持ちイイー!」につながる。練られた脚本、無駄のない映像、俳優陣の吹っ切れた演技が、鬼木幸治監督の大ウソを大いに助けている。まぁ、面白いので、一度観てみてっ!
<講評 by 審査委員長 中川陽介>
※広島こわい映画祭2023招待作品である「FAAAWWWW!!!」のインタビューの模様がYoutubeに上がっていますので、ぜひご覧ください!
※鬼木監督のWEBサイトで、過去作品が観られるそうです!こちらもぜひチェックしてください!
※鬼木監督のWEBサイトで、過去作品が観られるそうです!こちらもぜひチェックしてください!
※一旦、表彰式の画像をアップしていきます。コメントは後から随時加えていきますので、お待ち下さい。
沖縄NICE映画祭2 審査員賞(山里賞)「深骨」 節田朋一郎 監督
作品の冒頭から、生きているのか死んでいるのかわからない不思議な少女に惹かれ、彼女に関わろうとするマリコ先生と、深海魚と骨にしか興味のない男・小林教諭とが織りなす三人のひと夏の物語りに引き込まれました。最初は嚙み合わないように感じる三人の言葉が重なり合っていくにつれ、お互いへの想いや関係性が見えてくるという練りこまれた構造も良かったし、なにしろ登場人物たちが魅力的。セリフも「骨とは愛の残骸」「肉は傷の記憶」など印象的なフレーズがたくさん散りばめられていて、少女の成長物語でありながら、ある意味三角関係の恋愛模様にもなっているという、洗練された脚本も凄いなぁと思いました。まあ単純に言うと、今回の参加作品の中で、僕は「深骨」が一番好きだったということです。
<講評 by 映画監督・テレビディレクター 山里 孫存>
沖縄NICE映画祭2 審査員賞(上杉賞) 「ホモ・アミークス」 馬渕ありさ 監督
「やめろ」としか発さず、動きも奇妙。白黒の衣装でかろうじて清潔感を保っている生物。ホモ・アミークス。新薬開発のための実験用生物として、命は軽いが、見た目が人間。という不気味な序盤。
そこに、余命いくばくかの女性の夫婦のストーリーがパラレルする。新薬を待ちながら弱っていく妻。リモートでしか診ない医者。焦燥していく夫。
命とは?という重い問いを突き付けられながら、主役の冴えない男の中で芽生えてくる「母性」に気付いてついつい頬が緩んでくる。そして髭面の太った一体のホモ・アミークスが子犬や子猫のように可愛くてたまらなくなってくる。なんだこの映画のマジックは。
モチーフや設定は奇天烈だけど、物語の展開は王道。こういう映画大好きです。最後は愛だよね。と信じたい。
あと、主役の芦原さんはカメレオン俳優だなあ。
そこに、余命いくばくかの女性の夫婦のストーリーがパラレルする。新薬を待ちながら弱っていく妻。リモートでしか診ない医者。焦燥していく夫。
命とは?という重い問いを突き付けられながら、主役の冴えない男の中で芽生えてくる「母性」に気付いてついつい頬が緩んでくる。そして髭面の太った一体のホモ・アミークスが子犬や子猫のように可愛くてたまらなくなってくる。なんだこの映画のマジックは。
モチーフや設定は奇天烈だけど、物語の展開は王道。こういう映画大好きです。最後は愛だよね。と信じたい。
あと、主役の芦原さんはカメレオン俳優だなあ。
<講評 by 審査委員 上杉京子>
第15回下北沢映画祭コンペティションでもグランプリを獲得されている話題の作ホモ・アミークス。和歌山県の田辺・弁慶映画祭でも入選し注目を集めています。
(※朝日新聞の紹介記事を参照する >> )
(※朝日新聞の紹介記事を参照する >> )
沖縄NICE映画祭2 俳優賞 『深骨』 元生徒役 宮原俐々帆
脆さ、儚さ、弱さが“ないまぜ”に在りながら、スッと一本筋の通った存在感が魅力的です。
女教師から「どこの生徒?」と言われた時の表情にやられました(笑)
女教師から「どこの生徒?」と言われた時の表情にやられました(笑)
沖縄NICE映画祭2 俳優賞 『在りのままで進め』 和泉京華役 水村美咲
女優、女性、母、妻、主婦(←どちらかが先でしょうか?)の立ち位置がグルグル巡って変化しながら、全てにしっかり向き合う姿勢と、そのために生じる葛藤と苦悩の表情がカッコいいです。愛おしい子供への眼差しが素敵❤️
沖縄NICE映画祭2 俳優賞 『ヒコットランドマーチ』 タイラ役 青木裕基
職場上司と面談中のダメダメ号泣とエンディングの突き抜けたダンスがサイコーです。
沖縄NICE映画祭2 俳優賞 『ひどくくすんだ赤』 レッド役 松澤仁晶
痺れました。うらぶれた姿、生きる屍の悲哀。表情が素晴らしい👍👍👍
<講評 by 田原雅之(演出家/劇作家/俳優)>
※前回の俳優賞は選考委員の皆様のご意見を集約する形で行いましたが、今回は劇団を率い沖縄県内で俳優の養成などにも尽力されている田原氏に一任致しました。実力のある俳優さんが素晴らしい演技で作品を際立たせていると、かなり選考に時間をかけていただき、また4名に絞り切れないほど最終選考が難航しました。(最終選考候補者は15名!) 田原氏も今回上映決定の49本を全てご覧になっていただいております。
田原氏のプロフィールはこちら >> シアターテンカンパニーWEBサイト
田原氏のプロフィールはこちら >> シアターテンカンパニーWEBサイト
沖縄NICE映画祭2 音楽賞 「在りのままで進め」 松本動 監督
すごく心に引き込まれるストーリ展開で、重要なシーンでのサウンドトラックがとても効果的である。そんなに多く使用されてはないんですが、ラストシーンでは主人公の気持ちを表現した高揚感のあるコード進行とストリングアレンジで楽曲を仕上げていて、さらに、エンディング曲が非常に美しくこの物語を締めるにふさわしく心に響きました。
<講評 by 音楽プロデューサー・作曲家・指揮者 大山 健>
(※在りのままで進めWEBサイトを参照する >> )
(※PCワンズWEBサイトを参照する >>)
※順次、情報を書き加えていきます。夜までお待ち下さい。(by 加納