『ミヌとりえ』監督/脚本:全辰隆(チョン・ジニュン)

沖縄NICE映画祭2 最優秀映画賞(グランプリ)受賞作品『ミヌとりえ』

ミヌとりえタイトルロゴ・Minwoo and Rie Title

映画『ミヌとりえ』PHOTO-1

トレーラー映像

沖縄NICE映画祭2グランプリ受賞作品

민우와 리에 / ミヌとりえ / Minwoo and Rie (2022, 26min19s)

あらすじ

祖父が残した手紙を携え、韓国の群山という町にやって来た日本人のりえ。ゲストハウスで出会った韓国人の青年ミヌの助けを借りながら、りえは祖父が送ることのできなかった手紙の受取人を探そうとする。そしてりえは日本の統治時代に群山に暮らしていた祖父の秘密を知ってしまう。(by 全辰隆)

映画『ミヌとりえ』PHOTO-2

制作陣

FILM DIRECTOR

監督&脚本 - 全辰隆
(チョン・ジニュン) /
전진융 / Jin-(r)Yung CHUN

CAST

りえ役 : イ・チス
ミヌ役 : ペク・ゴニ
ジュウォン役 :イム・ジヒョン

STAFF

撮影:チョ・ソンウ
製作:キム・ヨンソク
助監督:キム・スリム
演出部:チョン・ジェヨン、イ・ギル
制作部:ハン・ジェテク、ミン・ソジョン、キム・ウォンボン、ミョン・セジン
撮影部:ヤン・ジウン、キム・インソク、チェ・ジョンミン、チョ・ヨンジュン
照明:イ・ヨンイン
照明部:ク・ソンホ、オ・ソンテク、ソン・ジホ
美術:イ・ジョンア
絵画作家:ホン・チェヨン
編集:ク・ユンジュ
リレコーディングミキサー:ホン・スルギ
フォーリーアーティスト:チョン・ナウォン
音楽:ノ・ヨンシム

映画『ミヌとりえ』PHOTO-3

作品に込めた想い

冷戦が終わり日本の元号が平成になった1989年の年の暮れに私は生まれました。

そんな時期に生まれたせいか、二度の世界大戦を経た世界は平和への道を歩んでいると、子供の頃なんとなく思っていました。

しかし2001年9月11日…

飛行機がビルに衝突するという、まるで映画のワンシーンのような恐ろしい光景を私はテレビで見ていました。
期待とは裏腹に、世界は平和への道を歩んでいませんでした。
世界から戦争はなくなっていませんでした。

そして2020年…

日韓関係が私が生きてきた中で一番悪化している時、コロナ禍というパンデミックに突入してしまいました。
人々の往来は止まり、ネット上では差別や偏見がはびこり、世界は再び大きな誤ちを犯してしまうのではないか…そんな危機感を感じ始めました。
ですが心配もむなしく、世界では紛争や戦争が激化しています。
憎しみの連鎖を止めない限り、この悲しみは永遠に続くことでしょう。

人類の歴史は加害と被害の連続でした。
悲しい歴史を繰り返さないために私達は過去とどう向き合い、どう未来に繋げればいいのでしょうか…
平和への近道は私にも分かりません。
だけどきっと、小さな対話から生まれるつながりが大きくなっていくことで、少しずつ平和に近づくことができるのではないでしょうか?
そんな想いを込めながらこの映画を作りました。

映画監督 全辰隆(チョン・ジニュン)
>> OFFICIAL WEB SITE を参照 

映画『ミヌとりえ』PHOTO-4

心優しき青年ミヌは、日本から来たりえの「旅の目的」を聞き、古い手紙を読み解きつつ捜索に協力していく。

映画『ミヌとりえ』PHOTO-5

りえは、少しづつ判明していく祖父の手紙に書かれた「秘密」に驚きつつも、核心に近づき、様々な想いが巡るようになっていく。

グランプリ受賞

那覇市の桜坂劇場にて 2024.1.26-1.28 開催の沖縄NICE映画祭2。見事グランプリを獲得したこの作品には、賞金30万円(提供:沖縄NICE映画祭)、副賞オリジナルデザインWEBサイト1年間(提供:株式会社木立)の2つが贈られました。
応募143作品の中から、3日間の上映作品を絞る第1次選考でも、約20名の委員団から非常に高い評価を獲得した作品です。前年に応募された「客観的恋愛談」においても、全辰隆監督の卓越したストーリー展開力、物憂げなシチュエーションをも絶妙に描き切る独特の映像感覚等が際立っていました。(by 加納)

受賞歴・映画祭名 受賞内容
ジャパンワールド映画祭 2022 グランプリ・観客賞·脚本賞
Sinchon Image Festival 2022 (韓国) グランプリ
山形国際ムービーフェスティバル 2022 グランプリ
東京インディペンデント映画祭 2022 準グランプリ
Larkspur International Film Festival 2023 (韓国) 脚本賞
唐津演屋祭 2023 銀賞・観客賞
Love & Hope International Film Festival 2023 (バルセロナ) Best International Short Film
ちば外房映画祭 2023 グランプリ
第7回福井駅前短編映画祭2023 優秀賞
沖縄NICE映画祭2024 グランプリ
熊谷駅前短編映画祭2024 優秀賞

プロフィール

Film Director & Video Creator
全辰隆 (チョン・ジニュン) / 전진융 / Jin-(r)Yung CHUN
Birth Day, Dec 21 1989

「視点を変えることで世界が違って見えてくる。
そんな普段とは違った視点を見せることにより、感動を与えることが映画や映像の力だと思っています。」

秋田県秋田市出身、在日韓国人3世
ソウル大学校 (韓国)
西語西語文学部、情報文化学部卒業
韓国芸術総合学校
専門社(修士課程)映画科演出専攻卒業

<これまで脚本/演出した映画>
・短編『国道7号線』(30分/2024)
・短編『父の写真』(9分/2021)
・短編『客観的恋愛談』(21分/2020)
・短編『韓国式』 (10分/2018)
・短編『窓の外のソウル』(8分/2016)

映画『ミヌりえ』PHOTO-6
映画『ミヌりえ』PHOTO-7
映画『ミヌりえ』PHOTO-8
映画『ミヌりえ』PHOTO-9

講評

登場人物は、他者を気遣う理性と優しさを持つ、ごく普通の韓国市民。穏やかな冬の陽光に満ち、ノスタルジックな街並みが美しい。そんな田舎町に、ひとりの日本人女性「りえ」が訪れ、街の若い男性「ミヌ」と共に過去を調べる内に、太平洋戦争当時の痛みを再発見する。その時、「ミヌ」は「りえ」にどういう態度をとったのか。結末は、ぜひ映画館で見て欲しい。私はこの映画を3回観て、3回目に涙した。全辰隆監督の、決して声高ではない、しかし強い覚悟を確かに受け取ったからだ。

映画監督 中川陽介

日韓の男女が出会い惹かれていく姿を通し、両国の抱える暗い過去も描かれるのですが、それは「拳を振り上げる」様なものではなく、あくまで静かで美しいタッチ。沖縄と日本にも同様の過去があり、その深い溝は未だに埋まぬままですが、この映画では「お互いを認め許し合う」という理想が強く伝わります。未だ紛争の絶えないこの時代に、沖縄で本作がグランプリに輝くいうのは、とても素敵な事だと思います。

映画監督 山里 孫存

祖父の残したハングルの手紙。謎解きの面白さ、静かに丁寧に描かれる2人の初々しさ、映像の美しさ、何より「テーマ性の高さ」と見ドコロが多い作品です。「春」と「マフラー」2人の想いがこもったワードは、寒い冬を超えた後に始まる「何か」を暗示しています。歴史に翻弄されながらも、前を向いて進み始める若い男女。一人一人の人間関係が、対立や問題をやわらかく解消していく。日韓の歴史を題材に、実は世界の対立の"解決"を描いているのでは。
かつて戦場となった沖縄から、この作品にグランプリを出せた事を、とても意義深く感じています。

映画監督・NICE主催・実行委員長 沖田民行

韓流ドラマとしての胸キュンな王道展開を踏襲しつつも、日本と韓国の間に起きた不幸な歴史をさらりと差し込む手際の良さ。新人らしからぬ技巧の先に見えるのは、人が人を思うことで生まれる温かな感情。それは「やさしさ」という国や民族を超える普遍性なのだ。戦争や差別、憎しみが世界を覆う昨今だからこそ、この短編が際立って光り輝いているかもしれない。全辰隆監督の作品をもっと見てみたい。

映画監督・NICE実行委員 平良竜次

画面構図や光と影のバランスが美しい。現代へと通じる展開、歴史的風合いや重み、趣き。特にキャスティングが素晴らしい。抑え目の演技、見応えがあります。プラトニックな愛の機微が随所に描かれながらも、2人のルーツを辿る旅の模様がとても気にかかり、この距離感がそのまま、古い記憶の中の関係からも導き出され、救いと希望、心温まるエンディングに。
観終わって、とても良い気分に浸れる。そんな映画体験でした。この映画がグランプリで本当に良かったです。

デザイナー・NICE実行委員 加納斉親

在日韓国人3世である全辰隆監督が、近年の日韓関係の悪化に憂慮した末に、自ら脚本を書き監督した作品。そんじょそこらのチャラいラブ・ストーリーとは一線を画す、歴史的にも社会的にも意義を持った奥深い内容なのです。日本と韓国の悲しい歴史をベースに、美しい映像と素朴ながら感情の機微を見事に表現した演技で物語が綴られていきます。沖縄NICE映画祭をはじめ各地の映画コンテストで受賞しまくっているのも納得の傑作中の傑作☆是非、観る機会に恵まれた方は観るべし!

アーティスト 服部卓明

たとえ生まれた国が違くても私たちはお互いを思いやれる。たとえ生まれた時代が違くても私たちはお互いを理解できるたとえ過ちを犯したとしても、私たちは言葉を通じて過去を乗り越えられる。
映画「ミヌとりえ」は現代の人が忘れてしまった当たり前の事を気づかせてくれる。この世界をやさしさで包み込む 宝物のような作品。

映画監督 神谷邦昭